全数届出から自治体判断での対象者限定で何が変わる?
2022年8月27日にリモートで行われた岸田総理の「新型コロナウイルス感染症対策等についての会見」にて、患者数の全数届出を自治体の判断で、届出の範囲を高齢者などに限定できるようにするよう見直しを行い、9月半ばには全国一律で以降するという考えが示されました。
こちらのページでは、そんな新型コロナウイルス感染症の患者数の把握について、現在の全数把握の問題点、届出を限定することによるメリットやデメリットについて紹介していきます。
現在の全数把握の問題点
新型コロナの新規感染者の「全数把握」は医療機関が作成した「発生届」を基に行われています。
感染症法では新型コロナを診断した医師に対して、感染経路やワクチン接種の有無の他、各患者の情報を保健所に提出するよう義務付けています。
国や地方自治体は「発生届」を集計し、全国や各地域の感染状況を把握、また、保健所は「発生届」を基に健康観察や患者の入院先の調整を行ってきました。
しかし、患者数が増えれば増えるほど、届出のための情報を医師や保健所が把握する時間だけでも莫大になってしまいます。
結果、本来の医療行為に当てる時間が減少してしまうことで人手不足に陥り、十分な医療を提供できなくなってしまうことが起こるため、医療現場からコロナ患者への対応に集中したいと、見直しを求める声が上がっていました。
届出範囲の限定によるメリットやデメリットは?
- メリット
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・医療機関の負担を軽減できる
- デメリット
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・範囲外の把握ができない
・感染者数の正確な数字が分からなくなる
・更なる感染拡大の要因にも
・新規変異種の見落とし
今回の見直しで、自治体判断で「発生届」を必要とする場合を、指定の医療機関や、高齢者や重症化リスクの高い人などに限定できるようにしました。
これにより、医師や保健所にかかる負担を大きく軽減し、医療ひっ迫の回避を図ろうとしています。
一方、デメリットを指摘する声も上がっています。
届出の範囲が高齢者や重症化のリスクがある方に限定されるということは、それ以外の方の届出は不要になるため、軽症者の患者数の把握ができなくなります。
また、届出がされないということは、保健所の健康観察を受けられなくなってしまいます。
そのため、自宅療養の間に重症化したりしても、気づいてもらえないまま治療が遅れてしまうなんていう可能性もあります。
特に、軽症者の場合は保健所の健康観察から外れるので、勝手な行動で更に感染を広げてしまうなんて言う可能性もあります。
また、届出対象でなかった場合に感染した新型コロナウイルスが新しい変異種だったような場合、変異種の見逃しにも繋がってしまう可能性があります。
全数把握や範囲の限定にはそれぞれメリットやデメリットがある
新型コロナウイルス感染症の医療ひっ迫に対する対応策として、現在行われている患者数の全数把握の見直しが行われ、9月には全国一律で自治体判断によって届出の範囲を高齢者などに限定することができるようになります。
届出の限定によって医療ひっ迫の緩和などが見込めますが、その分感染拡大などのリスクがあるということもきちんと念頭に置いて、その時に備えておくようにしましょう、